キャンバスサイズ「22.7×15.8cm」。この限られたスペースの中で、凝縮された美と創造を競う展覧会(公募展)。全国から個性的で創造性あふれる絵画が398点の応募があり、審査の結果、大賞には、みはら かつお氏(宮城県仙台市)「千年景 宮町ー南光台(仙台)」が選ばれました。
鮮やかな緑の画面に、町の地図が刻まれている。小さく並ぶ家々の輪郭は、鑑賞者が近づくにつれくっきりと存在感を持って浮かび上がり、そこで営まれる無数の人生の息遣いすら伝えてくるようだ。絵の具の厚みが、その土地で積み重ねられている時間の重層感となり、小さなサムホールの画面を飛び超えてはるかな想像の世界へと連れて行く。「表現すべき意味のために技法を使う」という創作の原点に忠実であることが、絵画の可能性を切り拓いている卓越した作品である。
ネコが少年の頭に上っている。ネコも少年もその状況をさして喜んでいる表情ではないが、互いの信頼関係はしっかりと頭につかまるネコの腕に表現されている。そう、二人とも「猫をかぶっている」のだ。岩絵具を使って、二つの生き物の内面を伝える確かな技術と、作品のテーマや帽子に描かれた魚に見られる愛嬌とが噛み合って、静かでありながら幸せな世界を生み出す秀作となった。