現代美術のシリーズ企画「アートドキュメント」の27回目は、美術作家の岩崎貴宏(1975年、広島県生まれ)の個展を開催します。岩崎にとって日本の美術館で開かれる約10年ぶりとなる本個展では、福井から着想を得た大規模なインスタレーションを発表します。福井は中生代の化石が多数発掘される手取層群や、新生代の火山活動で形成された東尋坊、そのような地層から湧き出る芦原温泉といった悠久の時を感じさせる地が点在する一方、今春、福井まで延伸した北陸新幹線の存在や、原発県とも言われるほど原発が多く立地していることから、岩崎はこの地を人類の活動が地質に影響を与えたとする「人新世」を含め、時間の積層を強く感じさせる場所だと捉えます。タイトルである天文学者カール・セーガンの言葉は、身近なものからこの世界の成り立ちを見つめ、私たちを壮大な宇宙の旅へと誘います。身の回りにあるものを素材に、岩崎が創りだす思いもよらない一つの宇宙は、固定化された私たちのあらゆる感覚を刺激し、揺さぶり、呼び起こすことでしょう。
1975年広島県生まれ、広島県在住。タオルや歯ブラシなど私たちの身の回りにあるものを素材に、その土地の日常の風景と接続する繊細で小さな見立ての世界をつくりだす。国内外の美術館や芸術祭にて数多くの作品を発表。2017年にはヴェネチア・ビエンナーレの日本館代表として個展「逆さにすれば、森」を開催。2018年芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
宇宙船”金津創作の森”号に乗って、岩崎さんの作品空間へ旅に出よう。